【書評】羽生さんの頭脳を解明する「先を読む頭脳」を読んで

先を読む頭脳

私は、2011年12月9日に放送した「アナザースカイ」を見て、羽生善治さんに惚れ込んでしまい、将棋はそんなに詳しくはないのだけれども、羽生さんが出演している動画を見たり、羽生さんが書いた本を読んだり、DVDを購入したりと、ミーハーなファンになりました。

今回は羽生さんに関する書籍、「先を読む頭脳」を紹介したいと思います。

著者のご紹介

本書は、羽生さんが書いたのではなく、伊藤毅志(いとうたけし)さんが書いています。
伊藤毅志さんは、電気通信大学の助手をされており、認知科学を研究されている方です。
また、もう一方協力されておりまして、松原仁(まつばらひとし)さんというお方です。
松原仁さんは、はこだて未来大学の副学長を務めている、人工知能研究の第一人者です。

という、学者さんが羽生さんを題材に書き下ろした本なのです。
出版したのは、2009年4月1日になります。

 

なぜ研究者が羽生さんを題材に書き下ろしたのか

松原仁さんの研究分野である人工知能とは、人間のような知的な振る舞いを機械に代行させたいという思いから発展してきた研究分野で、コンピューターが誕生する100年も前の1840年代の書物にも登場していた概念だそうです。

コンピューターの得意分野は、瞬時に膨大な計算が可能で、しかも、その計算に間違いがないことです。これは、人間の能力を遥かに超えており、様々な実用化が検討/実施されている能力ですね。

それに対して苦手分野は、人間のように感情や感覚がないために、抽象的な表現や理解ができないこと。例えば、本書で解説されているように、「可愛い犬」を認識させたい場合、コンピューターは途端に判断できなくなります。画像認証により「犬」を理解させとしても、「可愛い」はどう理解させたらよいのでしょう。それ以外にも、「辛い」や「楽しい」も難解ですよね。

そもそもコンピューターに理解させるためには、我々が「可愛い」という感覚とは具体的にどういうことなのかを理解している必要がありますが、まずそこから分からないですよね。。
ということで、「人間の感覚などのさまざまな知的活動のメカニズムを解明」しようと発展してきた研究分野があり、それが伊藤毅志さんが研究されている認知科学です。
コンピューター上に人間のモデルを形成し、それを以って人間自体を解明しようする研究です。

両者は、コンピューター上に人間の知的活動を模倣させて研究を試みています。一方、知的活動の題材として、知的ゲームは研究テーマの宝庫だそうで、特に、「将棋」は盛んに扱われていますね。そこで協力頂いたのが将棋界の生きる伝説、羽生さんということですね。

本書は、羽生さんにインタビューをした内容について、人工知能的視点と認知科学的視点から解説がなされています。各章毎に、「羽生さんのお話し」→「それについての伊藤さん、松原さん両氏の解説」という流れで書かれています。

 

本書の内容と感想

本書の目次は以下のとおりです。

  1. 「先を読む頭脳」を育む
  2. 効果の上がる勉強法
  3. 先を読むための思考法
  4. 勝利を導く発想
  5. ゲームとしての将棋とコンピュータ

 

では、心に残った個所を引用させていただきます。

 

羽生さんが10代の頃のご自分を回想して

以下の話しをして下さっています。

考えたり読んだりする上での、「常識」「直観」といった感覚的なものは、かなり早い段階で形成されてしまうように思います(10代の前半くらいまで)。
遅く始めた人の方が、ある意味でセオリーに忠実で常識的な将棋を指すということになります。

若い頃は頭が柔らかいから良いねって言われていましたが、私も年を重ねる毎に理解してきた気がします。
若い頃は固定観念が無いんですね。疑問を持たずに真摯に向き合える。そして、全てが正解と思って自分に取り入れることができる。
何事にも正直なときだったなと思えます。
将棋もその理論に漏れず、若い頃に得た感覚が、プロになってもその人の土台として活きるんですね。
逆に、色々な経験を積んでしまうと固定観念が躊躇を生み、最悪のことを考えて一歩が踏み出せなくなる。これは、将棋に限らず、日常生活でも普通にあることだと思います。
その考えを払い除け、勇気をもって一歩を踏み出すことで、新しい何かを見つけることができ、成長するのですね。
踏み出さないと、見付けることすらできないですもんね。

 

上達が早そうな子供は比較的すぐに分かる

指している将棋を一目見れば、その人にセンスがあるかどうかというのは確かにわかります。しかし、それではセンスのある子がプロになって大成するかどうかと聞かれたら、するかは分からないというのが正直なところです。
それは、先天的な頭脳の冴えというようなことよりも、「継続力」が大事な要素になってくると思います。

「継続」すること。やはり何事に対しても最も大事なことなんだなと改めて感じました。
継続を止めてしまえば、その舞台から降りることになりますし、止めなくても、ちょこちょこ休めば休むほど成長は遅くなります。
成長するための最短経路が「継続」なのですね。まさしく、急がば回れですね。
このブログもそうなるように精進します!

 

負けた時の気分転換の方法

対局に負けた際、お酒を飲んで酔っ払って忘れるという方法もありますが、私の場合は飲むとかえって翌日まで引きずってしまうことが経験で分かりました。
今は対局が終わったら、真っ直ぐ家に帰って寝るようにしているのはそのためです。
とにかく一度、流れを断ち切ってしまうことが一番いい解消法ではないかと思います。

羽生さんもお酒をそのような用途として嗜まれていたことがあるとは意外でした。そして、少し親近感がわきました。
実は、私はお酒が大好きで、嫌な思いをしたときはお酒を飲んで忘れるようなことを幾度もしています。
しかし、確かに羽生さんのおっしゃる通り、その気持ちはリセットされるどころか翌日に持ち越してしまいます。飲んでいるときは忘れられるけど、翌日起きたら気持ちは変わっていない。むしろ、掴みどころのない罪悪感みたいなものが足されている感じもします。下手に二日酔いなんかしたら、気持ちが落ちている状態で体調も悪いので最悪です。

それより、ウォーキングやハイキング、スポーツなんかで体を動かして気持ち良く忘れるのがいいですね。読書しても良いし、映画見ても良いし、いつもはしないようなことをすると気分がリフレッシュして良いです。ダメだと思っていてもお酒は飲んでしまう、羽生さんは自身を理解し、かつコントロールされています。私も自制心を以って自信をコントロールできる人間に成長しよう!

 

頭を休ませる方法

ことに重要なタイトル戦の前日あるいは前々日には、ボーッとして過ごす日を作っています。そうすることで脳のスタミナが蓄積されて、肝心な場面で力を発揮することができると思っています。
私の場合、対局の日程が過密になってくると、直観が働いて状況が良く見えるようになってきます。ですから体力的にはきつくなってきますが、対局が重なって常に頭が
勝負のモードに入っている方が、調子は維持しやすいのです。

私は結構寝溜めるをします。いつも平日は朝6時くらいには起きるので、週末は8~9時頃まで寝るだけでだいぶ寝た感覚になります。また、子供と一緒に昼寝もすると、
週明けの月曜日はビックリするくらい体力が蓄積されています。体力というのは、「体が動ける!」という訳ではなく、休みなしにも仕事ができ、しかも常に頭が冴えているような
状態になるのです。なので、集中力も普段より高くなり、集中時間も長く持ちます。
私の場合は積極的にというよりは、結果的に良い状態になっているのですが、羽生さんは意識的に頭を空にすることで自己管理されているのですね。脳のスタミナという表現がいかにも頭脳派職人的な言い回しな感じがしてすごく好きです。
また、忙しいときほど頭が冴えて、いつもより仕事が出来たりするのも感覚的に理解できる気がします。特に、自分のキャパが超えているくらい忙しいときは、思った以上に
結果が出せたことが多いような気もします。そういう状況を経験すると、心身ともに疲れますが、自分の力も上がるし一石二鳥な感覚があります。ずっとその状態でいたくはないですが、成長するには経験しなければならないことだと思います。

 

メタ認知による勉強方法と自己説明

「大学合格者体験記」や「成績が上がる勉強法」などがあるが、すべての学習者において、「個々のケースは全て違う」ため、直面している問題もすべて違う。よって、「自分なりのスタイル」を把握し、それに合った勉強法を行うことが最も重要。
そこで出てくるのが「メタ認知」で、客観的に自分の良いところ悪いところをを把握し、それを改善することで最適な学習方法を見つけることができる。
自分の行動や思考を自分の言葉で説明することを「自己説明」という。
メタ認知能力が高いことで、自己説明に繋がるのではないか。

この内容は、羽生さんが自身の将棋の学習を客観的に説明されていて、それについて解説された内容です。
ネット上には、「これさえ行えば○○できます!」とか、「○○してこんなに痩せました!」という成功体験が沢山ありますが、参考にしても、それが自分に合うかどうかは十分に検討する必要があります。
なぜなら、自分に合う合わないがありますからね。
ただ、その適正というものは自分では分からないですよね。私も今の仕事がピッタリ合っているか、ブログ運営が適正なのか、正直分からないです。
じゃぁ、どうやったら分かるか。それには、とことん自分を見つめ直すことが必要だと思います。そして、見つめ直して考えた結果をドンドン行うことだと思います。
それによって、沢山失敗しますが、失敗したおかげで「合わない」ことが分かります。それが分かると、その合わないことに類似している検討内容は足切りにできます。
結果的に、「合う」方法に一歩近づけます。それを繰り返すことが良いのかなと感じています。
羽生さん場合は、小さな頃からそれが自然と習慣化されているのですね。とても大事なことだと思いますし、それが出来ていると足腰の強いどっしりとした人間になるような気がします。

 

感覚的学習と理論的学習という学習パターン

人間の学習は大別すると二つのパターンがあると私は考えています。一つは、「体で覚える学習(感覚的学習)」で、もう一つは、「理解を伴う学習(論理的学習)」です。

これは、羽生さんが自身の将棋の研究方法について説明されたことについての解説内容です。
子供の頃の掛け算の勉強と言えば、「九九の暗誦」を思い出されるでしょうが、これがまさに感覚的学習で、「3×6」を「さぶろくじゅうはち」という風に学習します。一方で、3個のリンゴが入っている6個の箱を数えると18個ある。だから、「3×6=18」なんだという覚え方が論理的学習である。という解説です。

何かしら始めるきっかけは、感覚的学習が多いように思います。感覚で覚えることで自然と身に付いているような感じです。例えば、子供のころにやった格闘ゲームなんかは、
技を出すためのコマンドをすべて学習してから行うようなことはなく、まずやりながら慣れることを優先するはずです。それだけで強くなることがあるのですが、そこそこ強くなると、今度はさらに強くなろうとして、強い必殺技のコマンドを勉強するようになる。そうすると、さらにゲームが強くなる。
どちらか一方だけで学習するよりか、両方法で学習する方がより習得できるということですね。

 

総評

とにかく、伊藤さんと松原さんの解説が分かり易い。羽生さんの話しを理解しているつもりでも、その話しの解説を読むと、
「この話しはこういう視点でも見れるのか!」とか、
「この話しからこういう展開が広がるのか!」とか、
大変興味深く読み進めれる内容になっています。また、特別難しい言葉を使用しているわけではないので、理解しやすく、読み進めるたびに面白くなります。

「はじめに」と「あとがき」にも書いてありましたが、「一般に広めたい」想いが強いことを肌身に感じれました。
専門分野の方が一般にも広めたいということは、それほど我々にとっても「為になる内容だからね!」ということです。
普段の生活にとても応用にしやすい内容になっています。

 

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