【書評】芸術起業論[世界で通用させなければならない理由]

【書評】芸術起業論[世界で通用させなければならない理由]
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どうもタスです。

芸術センスが全くない私なので、著者のお名前も存じていなかった。辛うじて顔は拝見したことがある。センスとかいう問題でもないか。しかし、そうであるからこそ本は読んでみるべきである。とても面白かった。ほとばしる熱さと、客観的・鳥瞰的冷静さを以って語る芸術起業論。芸術家でなくても是非読んでみることをおススメする。

そこで今回は、読書習慣を始めて86冊目の本として『芸術起業論(幻冬舎文庫)』を読了したのでお伝えする。

 

著者のご紹介(本書引用)

村上 隆(むらかみ たかし)
アーティスト。有限会社カイカイキキ代表。1962年東京に生まれる。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。91年個展「TAKASHI, TAMIUYA」でアーティストとしてデビュー。94年ロックフェラー財団のACCグラントによりPS1.ARTPROJECTの招待を受け、ニューヨークに滞在。98年には、UCLAのアートデパートメント、ニュージャンル科に客員教授として招かれる。

日本アニメなどのサブカルチャーをベースに敷いたポップな作品が海外でも高く評価されている。主な個展に2001年「召喚するかドアを開けるか回復するか全滅するか」(東京都現代美術館)、02年「kaikaikiki」(カルティエ現代美術財団)など。高さ7メートルの巨大彫刻「二重螺旋逆転」は03年NYロックフェラーセンター、05年六本木ヒルズで屋外展示され、話題を呼んだ。
現在ニューヨークと日本に拠点を置き、各種メディアやイベントなど多角的活動や若手アーティストのプロデュース、展覧会のキュレーションも積極的に展開している。そして、アートイベント「GEISAI」を主宰する一方、六本木ヒルズのキャラクターやルイ・ヴィトンとのコラボレーションなども手がける。
日本の芸術の本質を探る試みである「Superflatプロジェクト」は、01年ロサンゼルス現代美術館等をはじめアメリカを巡回したPart1「Superflat」展、02年パリのカルティエ現代美術財団でのPart2「Coloriage(ぬりえ)」展、05年にNYジャパン・ソサエティギャラリーでのPart3「Little Boy」展で話題のうちに完結した。07年にはロサンゼルス現代美術館にて、大規模な回顧展が予定されている。

 

目次

第一章 芸術で起業するということ
 芸術には、世界基準の戦略が必要である
 なぜ私の作品は一億円で売れたか
 芸術作品の価値は、発言で高めるべき
 芸術は、創造力をふくらませる商売である
 芸術の顧客は、栄耀栄華を極めた大金持ち
 業界を味方につけて重圧をかけるべき
 業界の構造を知らなければ生き残れない
 経済的自立がないと、駒の一つになる
 「金さえあれば」が言いわけならダメだ
第二章 芸術には開国が必要である
 芸術家は、技術より発想に力を注ぐべき
 世界で評価されない作品は、意味がない
 個人の歴史の蓄積をブランド化する方法
 価値を生むのは、才能よりサブタイトル
 現代の芸術作品制作は集団でやるべきだ
 美術界の構造は、凡人のためにできている
 世界基準の「文脈」を理解するべきである
 芸術家は世界の本場で勝負をしなければ!
 日本の本道では、世界の評価はもらえない
第三章 芸術の価値を生みだす訓練
 6800万円の源は「門前払い」だった
 評価されていない作品ほど大化けする
 世界に、唯一の自分の核心を提出する
 自己満足を超える価値を発見するには
 世界にプレゼンテーションをする秘訣
 歴史を勉強すると自由な作品が作れる
 歴史のひきだしを開けると、未来が見える
 歴史から自分だけの宝を見つける方法
 展覧会を成功させるには根回しが要る
 権威は自分で作り上げなければならない
第四章 才能を限界まで引きだす方法
 作品が歴史に残るかどうかが問題である
 徹夜なんて、努力のうちに入りません
 芸術家の成長には、怒りが不可欠である
 はじめての題材にこそ、うまみがある
 挫折を超えられるかどうか、の分岐点
 「光を見る瞬間」をどう作るか!?
 劣悪な環境は、芸術を生むのには最適
 ひたすら作品の奴隷になるという境地
 賛否両論の概念が、未来を開いてゆく
あとがき

 

芸術にはお金が必要である

【書評】芸術起業論[世界で通用させなければならない理由]

読みながら、ショックを受け悲しくなった。日本の芸術の衰退と、それを知らずに生きてきた自分に。

本書は、芸術一筋、学生の頃から頂点を目指して生きてきた芸術家が、芸術はビジネスだと言い切るとともに、それをしっかりと受け止めてもなお芸術が大好きで最高だと伝えている。

私は本書に書かれているとおり、芸術を「仙人みたいな達観した人が、一人黙々と無言で、お金や名誉も無関係の世界で、自分の道のみに従って、自分の満足のいく作品を作り続ける」と捉えている典型的な日本人なのだと思い知らされた。ここまでいっては言い過ぎなのだろうけれど、少なくとも「ビジネス要素」「金銭的要素」と芸術は結び付かない。結果的に売れれば高額で目を引くこともあるけれど、創造している芸術家とお金は一緒に考えてはいけないものだと思っていた。もちろん「金の亡者」ではないのに。

しかし、真実は180度違っていた。芸術にはお金がかかるのである。それに、真意は「価値のあるものには価値がついている」のである。まさに、お金とは切っても切れない関係にあるのだ。

芸術は、春夏秋冬同じような作業をコツコツ続けていくものだという。作品に派手さはあっても、普段の生活に派手さはない。むしろ、「苦」の方が大きい。著者は、教え導く物には「苦」を与えるそうだ。敢えて与えることで「光」がみえるのだそう。それは一人では見えないものなので、力を貸しているのだそうだ。

芸術の世界とて異世界ではなく、実世界同様、とても泥臭いビジネスが展開されている。根回し、駆け引き、権威、嫉妬。芸実の実力はもちろん、戦う戦略がとても重要なのである。

 

衰退した日本の芸術に欠けるモノ

【書評】芸術起業論[世界で通用させなければならない理由]

特に、日本と欧米では芸術に対する姿勢が全く違うようだ。芸術家としてならば、前述したように「仙人」ではない。あくまでビジネスパーソンでなければならない。芸術を追い求めながらも、ビジネスの側面が落ちてはならないのだ。

また、作品についても見方が全く違う。芸術には歴史があり、ルールがあるらしい。そのルールがあったうえで、既成概念を打ち破ることは評価に値するが、やたらめったらメチャクチャな作品では目も当てられないそうだ。そのルールが分かる者こそ勝負ができるし、スタートラインに立ったと言っても良い。

むしろ、日本にいては分からないようだ。日本の芸術は明治以前で閉じているからだ。文明開化が花開いた明治に、欧米の芸術の模倣のみを芸術と追いかけてきた過去から、芸術を見れる人がほぼ皆無になったという。そのため、日本の芸術自体が伸びなかった。個性の出ない二番煎じばかりだからであろう。

芸術を上達させたいならば、「歴史」を学ぶことだという。そんなことを教えてくれた教師はいただろうか?絵の旨い書き方や楽器の演奏の仕方は習った気がする。歴史を学び、ビジネスを学び、戦略を学ぶ。そんなことを教える教師はいただろうか?そして、今もいるだろうか?

著者も、芸術をリタイアして教師に成り下がっている、当時の教師陣を見てうんざりしていたという。戦うなら突き抜けろ、挫折を味わえ、そして売れなくなってからの勝負に勝て(芸能人は二度売れろを思い出した)。

 

見晴らしの良い場所への行き方

【書評】芸術起業論[世界で通用させなければならない理由]

感情的な精神的なことばかり言っているけれど、本書は芸術家が独立して生きていくためには、何を学び、どう行動するべきかが緻密に、そしてリアルに描かれている。独立して生きていくためには、お金は必要だし、お金を得るには売れなければならない。一見、単純なようだけれど、芸術の世界ではとても厳しい課題なのだ。

しかし、その課題を諦めることは、芸術を諦めること。何気なく見聞きしている宮崎駿氏の言葉も著者のフィルターを通せば全く違って聞こえてくる。著者がいうように、同じようなレベルで、同じような志で、同じような世界に行く者は、結局、同じようなモノが見えるのだろうと。だから、歴史は繰り返すのだろうと。

そういう境地に行くだけで感嘆するのだけれど、境地を見れない私のような者に、境地への行き方や辿り着いた感想を赤裸々に示唆してくれる。芸術を志していなくても、見晴らしのいい場所を教えてくれる。だから行ってみなよと。

著者は芸術を心から愛している。だからこそ、同志を育て増やしたいのだと思う。心は熱く行動は冷静に。悲観的になってしまったけれど、もちろんそのままでは終わらない。日本の芸術の未来を明るくする唯一の道も著者の口から語られているので、是非注目を。

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