【書評】それでも、日本人は「戦争」を選んだ[当時の追体験が歴史を好きにする]

【書評】それでも、日本人は「戦争」を選んだ[当時の追体験が歴史を好きにする]
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どうもタスです。

歴史本は楽しい。そういう感情をさらに強めてくれた本書に感謝したいです。できれば、著者の専門である1930年代に留まらず、全史で学びたいと思わせられるような構成及び内容でした(読了するのは時間がいくらあっても足りなさそうだけど…)。

本書のテーマは「戦争」です。しかし、戦争それ自体が主ではなく、戦争を取り巻く様々な出来事が主になっています。それがどういうことかは読んですぐに実感できると思います。そこで今回は、読書習慣を始めて76冊目の本として「それでも、日本人は「戦争」を選んだ(朝日出版社)」を読了したのでお伝えします。

 

著者のご紹介

加藤 陽子(かとう ようこ)
1960年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科教授。89年、東京大学大学院博士課程修了。山梨大学助教授、スタンフォード大学フーバー研究所訪問研究員などを経て現職。専攻は日本近現代史。

 

目次

はじめに
序章 日本近現代史を考える
 戦争から見る近代、その面白さ
 人民の、人民による、人民のための
 戦争と社会契約
 「なぜ二十年しか平和は続かなかったのか」
 歴史の誤用
1章 日清戦争 「侵略・被侵略」ではみえてこないもの
 列強にとってなにが最も大切だったのか
 日清戦争まで
 民権論者は世界をどう見ていたのか
 日清戦争はなぜ起きたのか
2章 日露戦争 朝鮮か満州か、それが問題
 日清戦後
 日英同盟と清の変化
 戦わなければならなかった理由
 日露戦争がもたらしたもの
3章 第一次世界大戦 日本が抱いた主観的な挫折
 植民地を持てた時代、持てなくなった時代
 なぜ国家改造論が生じるのか
 開戦にいたる過程での英米とのやりとり
 パリ講和会議で批判された日本
 参加者の横顔と日本が負った傷
4章 満州事変と日中戦争 日本切腹、中国介錯論
 当時の人々の意識
 満州事変はなぜ起こされたのか
 事件を計画した主体
 連盟脱退まで
 戦争の時代へ
5章 太平洋戦争 戦死者の死に場所を教えられなかった国
 太平洋戦争へのいろいろな見方
 戦争拡大の理由
 なぜ、緒戦の戦勝に賭けようとしたのか
 戦争の諸相
おわりに
参考文献
謝辞

 

戦争に関わる複雑な情勢に迫る

【書評】それでも、日本人は「戦争」を選んだ[当時の追体験が歴史を好きにする]

歴史は数百年もしくは歴史区分単位の長いスパンで学んでいくような体験が主だったけれど、50年ほどの歴史が、しかもテーマが「戦争」に特化した内容だけで、これほど濃密で複雑な歴史を学べるとは思ってもみなかった。

本書は、2007年の年末から翌年にかけて(クリスマスと正月の間の休みに!)、著者が計5日間に渡って神奈川県の私立栄光学園の歴史研究部のメンバーを中心とした17名(高校二年生から中学一年生まで!!)に講義を行った内容がメインストーリーとして語られている。

その語られた内容というのが本書のとおり、「戦争」に関する内容なのだが、これがまた裏の裏舞台までさらけ出している。政治、軍隊、天皇などの日本の中枢だけでなく、当時の法律や景気、国民感情、そして世界との関係、世界情勢、戦争に関わるありとあらゆるポイントについて、戦争とどのように関係していたのかという視点で説明する。

そもそも本書の表示には以下の言葉が書かれている。

普通のよき日本人が、世界最高の頭脳たちが、「もう戦争しかない」と思ったのはなぜか?

まさにこう言った歴史の「?」に迫るのが本書のテーマなのです。

 

グローバルに生きるための歴史を学ぼう

【書評】それでも、日本人は「戦争」を選んだ[当時の追体験が歴史を好きにする]

そもそも歴史とは何か?的なことが、序章から、すでに本書の醍醐味を堪能できるような内容として書かれている。

例えば、「歴史は暗記物でしょう」と言った類に対する答えはとても気持ちの良いものになっている。例として高等学校の日本史Bなどの場合における学習指導要領の「目標」を紹介している。

我が国の歴史の展開を諸資料に基づき地理的条件や世界の歴史と関連付けて総合的に考察させ、我が国の伝統と文化の特色についての認識を深めさせることによって、歴史的思考力を培い、国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。

要は最後の部分が重要で、歴史を学ぶことで「グローバルに生きるための資質を養う」ことを目標としているのが歴史だということだ。そこから見えてくるのは、とても暗記でこなせる教科ではないことと、グローバルに生きる際に歴史を用いる場合の情報量は桁違いに備えていなければならないということ。

暗記でこなせるような教科ではないことは、課題解決や意思決定の用法として歴史が重要であることからも十分理解できる。同じような課題が過去になかったか?そこから答えは類推できないか?などが用法例になる。そして、意思決定が重要であればあるほど、沢山の事例が必要になることは言うまでもない。今や情報はインターネットに無限に広がっているとはいえ、取捨選択を可能とする前提知識が無ければ必要な情報を得ることはできない。

そう考えると、歴史というものは数百年もしくは歴史区分単位で学ぶことも重要ではあるけれど、鳥瞰に対する虫瞰ともいうべきか本書のように微に入り細を穿つような見方で歴史を追うのはとても学んだ気になる。学んだ気になると言ったけれど、表面的に得たというよりかは、体験したような感覚に近い。映画を見たような感覚だ。なので、入り込むし、入り込んでいる以上、とても楽しい。

 

歴史には意外な共通性がある

【書評】それでも、日本人は「戦争」を選んだ[当時の追体験が歴史を好きにする]

歴史は苦手だったけれど、そういう視点で見る楽しさを知らなかっただけなのだと改めて実感した。また、楽しさでいうと、「歴史という学問の最も肝要な部分」とまで言っている歴史的なものの見方を堪能できる点も素晴らしい。歴史上、インパクトある出来事に意外な共通性があると言った部分に気付けるかどうか。

日中戦争とイラク戦争然り、リンカーンの演説と第二次世界大戦後に書きかえられた憲法然り、意外な共通性を見せられるところから本書は始まる。戦争については、日清戦争から始まって第二次世界大戦までの約50年間の物語を講義形式で語ってくれる。私も受けて見たかったなと思いつつも、栄光学園の生徒さんの歴史教養レベルの高さについていけそうもないので、本書から学べて本当に楽しかったなと実感した。

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