【書評】地球と一緒に頭も冷やせ![書名が全てを物語る地球温暖化対策の批評書]

【書評】地球と一緒に頭も冷やせ![書名が全てを物語る地球温暖化対策の批評書]
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どうもタスです。

『【書評】地球温暖化の予測は「正しい」か?[予測の幅を狭める職人]』に引き続き、今回も地球温暖化に関する本を読んだ。だた、前回読んだ左記の作品は地球温暖化の予測をメインテーマとして語られていたのに対して、本書は「人間の未来を案ずることについて地球温暖化をテーマに語っている」ことである。

そのため、地球温暖化の現象や未来予測、それに対する被害を事細かに説明する本ではない。むしろ、地球温暖化を利用したプロパガンダを目論むことの抑止を示唆してくれる本といえる。もっとも、ノーベル平和賞を受賞したアル・ゴアに対する批評は非常に辛辣なもので、それでいて納得せざる負えないほど論理的で根拠(データ)も揃っている。

『【書評】地球温暖化の予測は「正しい」か?[予測の幅を狭める職人]』と本書を読むことで、地球温暖化を理解し、そして、今何をするべきか何を信じるべきかを自分の中で確立させる良い機会になるかと思う。そこで今回は、読書習慣を始めて36冊目の本になった「地球と一緒に頭も冷やせ!COOL IT: THE SKEPTICAL ENVIRONMENTALIST’S GUIDE TO GLOBAL WARNING(SoftBank Creative)」についてお伝えする。

 

著者のご紹介

ビョルン・ロンボルグ
1965年生まれ。デンマークの統計学者。デンマークのアーハウス大学政治科学部統計学担当準教授だった2001年に刊行した『環境危機をあおってはいけない』(邦訳は文藝春秋から刊行)によって世界的に大きな注目を集め、環境問題について語るときに避けては通れない人物の一人としてその名を知られる。デンマークの環境評価研究所所長を経て、コペンハーゲンビジネススクール准教授。

 

山形 浩生(やまがた ひろお):訳者
1964年東京生まれ。東京大学工学系研究科都市工学科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学不動産センター修士課程修了。大手シンクタンクに勤務する一方で、広範な領域で翻訳や執筆活動を行っている。

 

目次

第1章 ホッキョクグマは警告のカナリヤだろうか?
第2章 熱を帯びて:手短に説明すると
第3章 地球温暖化:主な心配事
第4章 地球温暖化をとりまく政治
結び 最優先事項をやるのがクールだ!

 

地球温暖化対策こそが不都合な真実

【書評】地球と一緒に頭も冷やせ![書名が全てを物語る地球温暖化対策の批評書]

疑ってかかる気持ちは大事だ。というが、地球温暖化問題に対してそれを体現した方々の意見の集約がこの本に詰まっている。常に疑る気持ちを保つのは大変だ。なぜなら、それこそ疑心暗鬼にならざる負えないからだ。しかし、科学というものは反証可能性がなければならないし、その心自体が科学といっても過言ではない。そんなことを改めて思い知らされた本である。

特に、アル・ゴアと京都議定書にはガッカリした。『【書評】地球温暖化の予測は「正しい」か?[予測の幅を狭める職人]』でも、映画「不都合な真実」で、温暖化による海面上昇が6メートルという話があると紹介したが、その時点で眉唾物であったものの、本書でその粗く根拠のない発信が全て丸裸にされ、もっともらしく「地球滅亡」的なセンセーショナルな内容がちんけでつまらないものだということが理解できた。

IPCCによると21世紀末には18~59センチの上昇だと予測されている。海面上昇だけをとってもこれだけ大げさに喧伝されており、しかも、喧伝項目は海面上昇だけではない。温度、氷河、生物、河川、洪水、竜巻、ヒョウ、雷、飢餓、貧困、水、感染症などなど、上げたらきりがないほどの騒ぎぶりだ。

京都議定書にしても、達成できない無理難題な事項をなぜわざわざ強制力を持って掲げるのか。そして、世界のビジネスマンなら誰だって知っている費用対効果という言葉を知らないのかと思わせるほどの高額なコストと、それだけの莫大なコストをかけても2100年に地球温暖化により達する温度を5年間遅らせるだけというパフォーマンス。費用対効果の説明にこの事実を持ち出して通る案件なんて世界中どこにもないのは調べなくても分かる。

 

地球温暖化対策としての炭素削減に全てを投じることについて

【書評】地球と一緒に頭も冷やせ![書名が全てを物語る地球温暖化対策の批評書]

本書は、地球温暖化をスローガンにしてCO2削減を謳っている者に対して、そもそもの目的を忘れていないかい?ということをツッコんでいる。目的は「未来の私たちの環境を良くするため」なのだ。それがCO2削減による地球温暖化の防止(防止は簡単にはできないし、すぐにもできない)で全て解決できてしまうと言っているのだ。

先程の話を例にとると、海面上昇によってある地域は海中に沈むし、洪水や気象被害も受けやすくなるというのだという。それなら、海面上昇対策をすれば良いのであって、地球温暖化対策に直結する話ではないし、すり替えられてもいけない。しかも、費用対効果的にも海面上昇対策の方が遥かに得策だ。すなわち、地球温暖化という大きな括りで全てを見るのではなく、地球温暖化によりもたらされるであろう被害のそれぞれに対して、適材適所で対策する方がコスト的にも人命救助の意味でも遥かに効果があると言っているのである。

地球温暖化による気温上昇のために亡くなる人口が多いのは理解できる。しかし、温暖地ばかりを注目しており、寒冷地のことは全く気にかけない。気温上昇によって寒冷地の気温も高まる(むしろ、寒冷地の方が気温の上昇率は高い)ので、寒さによる死亡数の把握も忘れてはいけないのである。温暖地と寒冷地では、世界的に見ても寒冷地の方が死亡数は多い。よって、地球温暖化により寒冷地で亡くなるであろう人達の一部は助かることになる。温暖地と寒冷地を相殺しても、助かる人の数の方が多くなるのである。人命を数で換算するのは道徳的ではないにしろ、ある効果を示すためには統計を示さなければならない。地球温暖化は決してマイナス面ばかりではないことに注目したい。

とは言え、地球温暖化は人為的な要素により起こっていることは確実で且つ解決しなければならない問題であることは確かなので、その対策は必須である。要は、その解決の仕方なのである。様々な問題と並列に並べて、横一列で考える必要があるのだ。莫大な費用をかけて早急に対策し、その効果はまだまだ先。。。というよりも、目の前の問題で優先的なものを解決していく方が費用対効果も高いのである。

 

地球温暖化を利用した偏重な発信

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意外にそういう冷静な判断をできないことが驚きなのと共に、アメリカの副大統領ともあろう方がそれを喧伝している事実にもさらに驚いた。しかも、そんな方がノーベル平和賞受賞だなんて…。ノーベル賞の価値すら問われる問題なのではないかと思う。しかも、それに釣られて政治家も政治政策のし易さを根拠に炭素削減を支持するし、科学者も予算や権威の奪い合いのために酸素削減を支持する。あのIPCCの議長であるR・K・パチャウリ博士ですらそうだ。全ては利己の塊である。

マスコミは他への影響が多大な中で最も利己の塊で、それは日本だけでなくどの国でも同じようだ。本書でも以下のように端的に表現されている。

「よいニュースというのは通常は悪いニュースのことです」とジャーナリスト向けのある教科書は書いている。

まさに視聴率・視聴数を取るためだけの利己意外になんと言えばいいの的な百害あって一利なしなのである。悪いことばかり流しているようじゃメディアではないし、見る価値もない。悪いことも善いことも同じように平等に発信しなければならないのである。

 

最適な選択を可能とするための最良な質問

【書評】地球と一緒に頭も冷やせ![書名が全てを物語る地球温暖化対策の批評書]

本書の結論は、地球の未来を案ずるなら地球温暖化対策よりも経済発展を目指すべきであると言っている。それが何故かは本書で見てもらうこととして、「ぼくたちの世代としての使命を選ぶなら、どちらを優先するべきか?」というフレーズには共感した。未来の人達に向けて、面と向かって正しい決断をしたと言えるようなことを選択できているかということだ。

メディアを筆頭に、地球温暖化対策ばかりを善と捉える発信のトレードオフを考慮しないままに、悪いニュースや悪者探しへのこだわりが環境政策の形成に影響すると、その効率性に重要な結果が生じてしまう。アル・ゴアを始めとした炭素削減論者には、改めてこのことを重々理解してもらったのちに、再度、地球の未来について考えてもらいたいものだ。

最後に、炭素削減を初めとする種々の問題に対する質問の仕方が書かれていたので共有したいと思う。これは自分対する質問としても使えるテンプレである。

  1. 問題の規模はどのくらいなの?
  2. その問題によい側面はないの?
  3. それであなたの解決策は何?
  4. それをやると問題のどのくらいが解決できるの?
  5. それにはいくらかかるの?
  6. 他の専門家はどんな解決策を提案してるの?
  7. 他の専門家は、それでどのくらい解決できると言ってる?
  8. 他の専門家はいくらかかると言ってるの?
  9. 経済学者に費用便益分析をしてもらってください。
  10. それを世界の他の問題についての解決策と比べてください。

 

おわりに

批判的思考(クリティカルシンキング)を意識すると、本書もそういう視点で見なければならない。あとがきに書かれている訳者の視点はまさにそれだ。この視点を持って「不都合な真実」を読んでみるのも面白いと思った。その際は頭をクリアにして読まなければならないが、両極端な話を見るのは面白いと予想できる。ただし、違いは詳細な裏付けが有るか無いかの点で、本書を信じることに分がありそうだ(不都合な真実は読んでいないが…)。

本書の素晴らしさは、自論展開に盲目に突き進む炭素削減論者とそれを批判する目も勇気も持たないメディアや政治家・科学者の全ての人に言える本書名そのものである。

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