【書評】実践!多読術[圧巻の厳選ラインナップ]

【書評】実践!多読術[圧巻の厳選ラインナップ]
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どうもタスです。

読書に関する読書本。そういった本はまさに読書のメタ本とでもいえようか。私は書名からしてワクワクを抑えられなかった。いつか読もうと思ってようやく手に取った本、それが本書である。

そこで今回は、読書習慣を始めて92冊目の本として『実践!多読術 –本は「組み合わせ」で読みこなせ(角川oneテーマ21)』を読了したのでお伝えする。

 

著者のご紹介(本書引用)

成毛 眞(なるけ まこと)
1955年、北海道札幌市生まれ。79年、中央大学商学部卒業後、自動車部品メーカー、アスキーなどを経てマイクロソフト株式会社入社。91年より同社代表取締役社長。2000年に退社後、同年5月に投資コンサルティング会社「株式会社インスパイア」を設立。現在、スルガ銀行株式会社、株式会社スクウェア・エニックスの社外取締役や、さまざまなベンチャー企業の取締役・顧問などを兼職。早稲田大学客員教授も務める。

 

目次

はじめに
第一章 超併読のある生活
第二章 賢者の読書、愚者の読書
第三章 経営者は自然科学に学べ
第四章 書評の技術
第五章 賢者の蔵書棚を作ろう –厳選ブックガイド
おわりに

 

超並列多読術とは

【書評】実践!多読術[圧巻の厳選ラインナップ]

私の疑問は一つだけ。果たして、並列多読なんて可能なのだろうか?本書は「多読術」だけなのだが、「並行」して多読することだというのは評判として聞いていた。実際に、著者が勧める多読術はそのとおりであった。

並列して多読するためには、本を様々な場所に置くことを勧めている。リビングはもちろんだが、寝室にはシリアスな単行本を置いているようだ。また、トイレ。トイレには図版や写真を多用した書籍が多い。さらに、バスタブにまで。湯気でシワシワになるから高い本は持ち込まないそうである。

多忙を極めていた10年前(出版当時から10年前)ほどは、移動用の自動車のなかにも4、5冊は常備していたらしい。また、出勤前に忘れないよう玄関にも配置していたようだ。多並読を徹底した読書家である。

並列して多読するのだから、自ずと読書量は多くなる。そうなると、最も大きな問題は貯蔵方法であるが、実は、本の選定方法も興味深い。月々手に取る100~200冊のうち、最後まで読み通すのは10~15%になるそうで、その量は10~30冊程度になるそうだ。

ともすると、月々190~170冊はふるいにかけられた後にまた今度ねとストック先で待機ということになる。選定作業だけで数冊読んだ気分になりそうなものである。しかし、逆に考えるとこれだけ多くの本に接するのだから、名著を知る確率も常人の比にはならないのである。

 

軍事本と自然科学本

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著者は軍事本を推している。私は軍事本を推す人なんか聞いたことが無かったのでとても興味深く読ませてもらった。結論から言うと、軍事本は特にビジネスマンに有効である。なぜなら、マーケティング力を養う格好の本だからである。それについては、マーケティングの背景を語る以下の内容からも理解できる。

軍事戦略とは、基本的にいかに敵を包囲するか、どう敵をワナに誘い込むか。また、いかに素早く進軍して敵の主力を叩くかを競うものだ。必要な物量をどう計算するか、ロジスティックスをどう展開して補給路をいかに確保するか、などといったことも重要な要素となる。
第二次世界大戦中のアメリカで、軍事問題の解決手法としてオペレーションズリサーチが発達したのは、先述のとおりだ。オペレーションとは作戦そのものを示す言葉だったのだ。たとえば、何発の弾を撃ち込むと、その砦が破壊できるかという作戦(オペレーション)を調査(リサーチ)したのだ。
その結果、最適なレーダー網の配置、護送船団の編成、効果的に爆撃するための爆撃機の編成など、多くの作戦が改善された。戦後は、そうした作戦をけん引していた人材がマッキンゼーなどのコンサルティング会社に入った。そして、オペレーションズリサーチは、マーケティング活動として企業活動において大いに発達を遂げたのである。

軍事問題の解決手法としてオペレーションズリサーチが発展した。これは最適な策を計画する上では自然な流れである。さらに、その流れがコンサルティング会社に行ったことも(業種を考慮すると)自然な流れではあるが、とても面白い。マーケティングの本質を見極めるには軍事本を読むことが良い理由はこれなのである。

一方で、自然科学の本は経営者に向いているそうだ。その理由は、経営者は不確かなものに挑戦しなければならないからである。それには先見の明を持たなければならない。そう、仮説と検証である。とすれば、仮説を立て検証するプロセスがまさに自然科学なのである。

景気は、あらゆる要素が絡み合って変動し、金利や為替レート、株価も相互に関係しながら揺れ動く。こうした因果関係を読み説き、大きなトレンドとして提示した仮説を検証していく作業が経済には必要だ。
いっぽうで経営において、このような仮説検証のプロセスはマーケティング部門が得意だと思っている人が多い。たしかにマーケティング部門は、仮説を検証するための市場調査やテスト・マーケティングなどを行っている。
しかし、事業計画の立案などといった、本格的な仮説の立案は経営が担う機能であり、そのための方向性とタイミングを見定めるのが経営者の仕事なのだ。経営者こそが仮説を検証するためのプロセスについて体得しておく必要がある。

以上をまとめて著者は以下のように言っている。

経営は仮説を立て、それを信じてリスクを取るが、マーケティングは現状認識ができないものには手を出せない。だから、経営者は自然科学の研究者のように、そしてマーケティング担当者は、軍隊の作戦参謀のように振る舞うのが正しい。

ただの読書家ではなく、ビジネスマンとしての経営側の視点も兼ね揃えた著者ならではというところに、信憑性も増すのではないかと思う。軍事本…、また読みたい本が増えた…。

 

賢者の蔵書棚に並ぶ厳選ラインナップ

【書評】実践!多読術[圧巻の厳選ラインナップ]

最後に、著者がおススメする本を紹介する。初めに言っておくが、私もこの中から相当数の本を読みたいと思って控えている。実際には、「知りたければ本を読め」なのだが、これだけ面白そうなラインナップなのだから、共有しようと思った次第である。

なお、以下に紹介するラインナップに新書及び文庫は含まれていない。著者によれば、それを含めるとあまりにも数が多くなってしまうからだそうだ。

文化・人生編

『宮脇檀の住宅設計テキスト』 宮脇檀建築研究室(丸善)

宮脇檀の住宅設計テキスト [ 宮脇檀建築研究室 ]
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¥3,190 2020/8/13 15:00:18

『あなたのために──いのちを支えるスープ』 辰巳芳子(文化出版局)

『フィレンツェの台所から』 渡辺怜子(晶文社)

『銀座の達人たち』 早瀬圭一(新潮社)

『すゞしろ日記』 山口晃(羽鳥書店)

『水彩画プロの裏ワザ』 奥津国道(講談社)