![【書評】予定通り進まないプロジェクトの進め方[2つの概念でプ譜を作る]](https://tasulife-23.com/wp-content/uploads/2020/10/00-1.jpg)
どうもタスです。
プロジェクトと聞くと、システム開発であったり、製品開発であったり、ビル建設であったり、とても大きな仕事というイメージがある。けれど、実際は日々人生がプロジェクトの連続なのである。
そして、プロジェクトはいくら計画して実施しても、そのとおり行くとは限らない。まさに生き物と言われる所以である。そんなことがタイトルを見れば想像できてしまうのが本書で、そう感じているからこそ手に取った。
そこで今回は、読書習慣を始めて104冊目の本となった『予定通り進まないプロジェクトの進め方(宣伝会議)』を読了したのでお伝えする。
著者のご紹介(本書引用)
前田 考歩(まえだ たかほ)
1978年三重県生まれ。自動車メーカーの販売店支援・CER事業、映画会社のeチケッティング事業、自治体の防災アプリ、保育園検索システム、夫婦の育児情報共有アプリ事業、魚の離乳食的通販事業、テレビCM制作会社の動画制作アプリ事業など、様々な業界と製品のプロジェクトマネジメントに携わる。プロジェクトに「編集」的方法を活かした、プロジェクト・エディティングを提唱、実践中。
後藤 洋平(ごとう ようへい)
1982年大阪府生まれ。2006年東京大学工学部システム創世学科卒。学生時代に大学発商品企画プロジェクトCommunication Center立ち上げプロジェクトへの参画から始まり、三次元高速試作サービス、アート&クラフト系新規事業開発、人材系新規事業開発、クラウド業務システムの導入プロジェクトと、ジャンル問わずにプロジェクトに取り組んできた、プロジェクト男。大小あわせて100を超えるプロジェクトを経験するなかで、プロジェクト工学のコンセプトを考案し、提唱中。
目次
第1章 なぜプロジェクトは失敗するか
第2章 プロジェクトの道具箱
第3章 プロジェクト工学
第4章 プロジェクト譜 ~プ譜を使ってみる~
第5章 プロジェクト・エディティングの技術
第6章 プロジェクトの感想戦
終章
あとがき
ブックリスト
不確かなものをどう管理していくか
冒頭に話した通り、プロジェクトは先が読めない。ベストプラクティス通り計画して、実施しても、問題は起こるし、課題は発生する。では、どうアプローチしたら上手く管理できるのだろうか。その答えの一つとして本書を読むことをおススメする。
実際に私もプロジェクトを進める中でむず痒い想いをすることはしょっちゅうある。そして、それは技術的なことではなく、進め方であったり、ステークホルダーとの情報共有や相互理解の足りなさであったり、ロジカルに解決できそうな問題ばかりではない。
では、プロジェクトとはそもそも何なのだろうか?それのなにが困難にしているのだろうか?そして、解決へのアプローチをどう行うのが良いのだろうか?
一種の答えが本書にあると思う。何気なく手に取った本で当たった本だと思える本書は、プロジェクトを体系的に説明し、生きるモノを不確かなモノをどのように管理運営していくかについて、理解を深めることができる良書である。
プロジェクトが困難である種々の要素
そもそもプロジェクトとは何なのだろうか?それは三要素を満たしていれば、それはすなわちプロジェクトだという。
- 「未知」を「既知」に変換していく行為。
- ノウハウや知識の不足。
- 有限なお金と時間。
そして、プロジェクトの「未知」を「既知」に変えていく過程で必要な情報は以下のとおりである。これが乖離すると、いわゆるコミュニケーションが成り立たない。不足していると言われるところである。
- 要望
- 要求
- 要件
- 仕様
- 設計
後半の2つは本題に入っている工程ではあり、とても重要なのは前半の3つである。そして、ここで最も重要なのは「本当に言いたいことは何?」である。
相手は思っていることを言えていないかもしれない。もしくは、本来言いたいこと自体をまだ知らないのかもしれない。頭に描き切れていないのかもしれない。よって、それとは違うことを要望しているのかもしれない。
コミュニケーションとは話せること、意思疎通ができることではない。もちろん、プロジェクトを運営する上で、良好な関係を気付くことは重要である。しかし、目的は「真の要望」を成し遂げることであって、それを引き出すことがとても重要になるのだ。
さらに重要なことは、引き出す側だけがプロジェクトの参加者ではない。引き出される方もプロジェクトの参加者であることを充分に意識することだ。お客さんでは良い成果を上げることはできない。「職務分掌」をわきまえ、役割と責任を意識することが重要である。
プロジェクトを成功させる方法論
本書は、そんな生き物と化したプロジェクトに対して、「プロジェクト工学」、「編集工学」の2つのアプローチで成功させようとしている。編集工学はその概念だけでなく、その創始者である松岡正剛氏が有名である。
そして生まれた方法が「プロジェクト譜」である。「兵棋演習」と将棋の「棋譜」及び「感想戦」をヒントに考案された手法である。未知の多変数がキーで且つ想定外が当たり前なプロジェクトに対して、可視化でき、ナレッジマネジメントでき、コストのかかり過ぎない手法。
プロジェクトは、いわばその場限りの対応になっている感が否めない。生き物であるゆえ、対応方法は毎回異なるからである。そうなると、ナレッジは蓄えれることなく消費される。結局、有用なナレッジは戦歴の多いプロジェクトマネージャーの頭の中だけにあり、職人的ナレッジマネジメント手法にならざる負えない。
プロジェクト譜が管理し公開することで、プロジェクトへのアプローチをシステム化することが可能になる。これは画期的なことだ。まさに「未知」を「既知」にし、「不可視化」を「可視化」することなのである。