【書評】ザ・ペニンシュラ・クエスチョン(上・下)[六者協議の複雑怪奇]

【書評】ザ・ペニンシュラ・クエスチョン(上・下)[六者協議の複雑怪奇]
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どうもタスです。

上下巻合わせて840ページもある大作を読み、充実した気持ちになっている。それと共に、外交、とりわけ首脳レベルでの外交の難しさを痛感した。本書のタイトルにもあるペニンシュラがこれほどまでにも強敵であるとはほとんどの人が理解していないのかもしれない。

そこで今回は、読書習慣を始めて100、101冊目の本となった『ザ・ペニンシュラ・クエスチョン/上・下(朝日文庫)』を読了したのでお伝えする。

 

著者のご紹介(本書引用)

船橋 洋一(ふなばし よういち)
1944年北京生まれ。元朝日新聞社主筆。同北京特派員、ワシントン特派員、アメリカ総局長などを歴任。この間の報道、執筆で、ボーン・上田賞、石橋湛山賞、日本記者クラブ賞などを受賞。2011年9月から慶應義塾大学特別招聘教授。

 

目次


第1章 小泉訪朝
第2章 小泉再訪朝
第3章 ケリー訪朝
第4章 「枠組み合意」崩壊
第5章 コシェコフ訪朝
第6章 林東源訪朝


第7章 バランサー
第8章 銭其琛訪朝
第9章 中国大頭
第10章 六者協議始動
第11章 六者協議漂流
第12章 金正日南巡
終章
あとがき
著者との「クエスチョン・タイム」
インタビュー・リスト
略年表

 

おにぎりから始まる北朝鮮問題

【書評】ザ・ペニンシュラ・クエスチョン(上・下)[六者協議の複雑怪奇]

本書は、2002年当時の首相である小泉純一郎が訪朝するところからはじまる。その目的は、まだ記憶に新しい拉致被害者の救済である。それに対する北朝鮮の目的は、平壌宣言であり、その内実は国交正常化である。

もちろん、日本側は拉致の件が解決しない限り日朝正常化などは宇宙のかなたではあるが、少なくとも首脳会談へ進んだことはとても大きいことであった。その訪朝時に日本団はお弁当やおにぎりを持参していた。それはなぜか。本書から引用する。

拉致問題がどのような展開になるか分からない状況の下、晴れがましい宴会や社交が入ってはならない。そこで、おにぎりやほうじ茶やミネラル・ウォーターを専用機に載せて日本から持ち込んだ。そうしたことはすべて小泉の腹心である飯島が取り仕切ったが、飯島はあるところから「江沢民(中国国家主席)」が(2001年秋)平壌を訪れた際、歓迎宴では一切、食事には手をつけなかった」という話を聞き、日朝首脳会談中はテーブルの上の水を飲まないこととし、どうしたも必要なときのために通訳のカバンにミネラル・ウォーターのペットボトルを何本かすべりこませた。

拉致問題がどのような展開になるか分からないというのは平壌宣言をするかどうかに関わってくるのだが、お弁当やおにぎり等の用意周到さについては次の件(くだり)で判明する。

小泉のカンは怖いほど当たった。「八人死亡」の悲報の下、先方の昼食の正体を受けていたら・・・みなそれを考えただけでぞっとした。

この訪朝時に、北朝鮮側より、拉致被害者に関する調査結果が報告されたのだ。五人が生存、八人が死亡という報告である。

 

複雑怪奇な六者協議の行方

【書評】ザ・ペニンシュラ・クエスチョン(上・下)[六者協議の複雑怪奇]

本書は、タイトル通り北朝鮮を取り巻く六者協議の主要国(日本・アメリカ・韓国・中国・ロシア・中国)がどのような政策で、どのような国益を目的に、これまでどのような対応をして、どのような歴史の中で、どういう方向性に向かって言ったのか。それらが時々刻々と詳細に記されている。

巻末にインタビュー・リストが掲載されているが、各国要人150人超への取材の成果がまとめられているのである。読んでいて、とても迫力がある。そして、外交という普段耳慣れない奥の深い現実を切迫するリアル感を以って感じることができる。

外交というのは、抽象化していくと結局は子供の喧嘩そのものだなと思えるのだけれど、国を代表する大人達がそれを行っているのだから始末が悪い。そして、何より喧嘩両成敗だとゲンコツをくらわす大人役がいない。だからこそ簡単ではないし、問題は複雑怪奇な方向へと向かっていき収束しない。

何しろ、北朝鮮という話が成り立たない(成り立たせない)国とのやりとりなのだから、苦戦するのは必至である。それでいて、各国は北朝鮮をなだめるだけではない。そこには必ず国益が絡んでいるのである。自国にとって最も良い選択をし、良い妥結をするのが外交なのである。

また、外交という舞台に昇華する前に、自国で方向性を固める必要もある。そこにも意見の対立や政治的駆け引き等、様々な思いが交錯して完全なる複雑系が出来上がっているのである。

本書を読むと、とてももどかしい気持ちになる。しかし、それが現実であり、過去に起こったことなのである。誰のどの国のどの案を骨子とするべきなのか、何が正解なのか、考えながら読むと楽しいかもしれない(し、辛いかもしれない…)。

マスメディア等では知ることができない真実を知ることはとても意義がある。総理大臣を辞職した安倍晋三元首相が拉致解決にあれほど熱く対応しているとは知らなかった。アメリカは外交の前に国内論をまとめるのがそれほど大変だとは知らなかった。

中国が北朝鮮に多大なる支援をしているのにもかかわらず、顔色を窺わなければならないことも知らなかった。金正日が外交辞令の一つも言えない人である像が壊された。本書は2002年~2006年頃の情勢を記しているが、北朝鮮対応は今現在も続いている。本書を読み背景を知ることで、ニュースを見る視点が変わる良い機会になった。

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