【読書メモ】「ゼロリスク社会」の罠[リスクを正しく捉える方法を学ぶ]

【読書メモ】「ゼロリスク社会」の罠[リスクを正しく捉える方法を学ぶ]
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どうもタスです。

「ゼロリスク」この言葉は昨今のコロナ禍の影響からか、聞くことの多くなった言葉のうちの一つとなった。私は「リスクをゼロにしよう」というより、「リスクはゼロにはできない」という趣旨の中でよく聞く印象である。

本書はその意図がよく理解できるよう説明されている。私にとっては非常に分かり易かった。そこで今回は、読書習慣を始めて140冊目の本となった『「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる(光文社新書)』を読了したのでお伝えする。

 

著者のご紹介(本書引用)

佐藤 健太郎(さとう けんたろう)
1970年、兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターに転身。2009年から3年間、東京大学大学院理学系研究科広報担当特任助教をつとめる。『医薬品クライシス』(新潮新書)で、科学ジャーナリスト賞2010を受賞。2011年には、ウェブ・書籍などを通じた化学コミュニケーション活動に対し、第1回化学コミュニケーション賞を受賞。著書は他に、『有機化学美術館へようこそ』『化学物質はなぜ嫌われるのか』(ともに技術評論社)、『創薬科学入門』(オーム社)、共著として『化学コミュニケーション』(化学工業日報社)などがある。

 

目次

はじめに
 リスク過敏症と日本の停滞
 、教育、企業――「リスク回避」に最も注力するという矛盾
 誤ったリスク判断による経済・身体的損失を増やさないために
第1章 人はなぜ、リスクを読み間違えるのか
 まずは言葉の定義から……
 人はリスクを読み誤る生き物である
 「本能的リスク判断」が人間を強力に支配する
 リスク認知因子10ヶ条
 確証バイアス――「嫌いなものは、間違っている(はずだ)!」
 増幅するバイアス――ネット上でのハウリング
 正常性バイアス
 こんにゃくゼリーともち――バイアスの「ベテラン」と「バージン」格差
 科学技術の進歩が忘れさせたリスク――「自然な○○」ブーム
 リスク情報(=不安)を商品とするマスコミ報道
 アンカリング効果――大震災後の意外な認知変化
 リスクの性質――放っておくと増えていく
 リスクはゼロにならない――人生はトレードオフの選択の連続
 レインマンの罠――ゼロリスク幻想が、より大きな危険を招き寄せる
 定性分析と定量分析――「ゼロ」幻想から脱出する方法
 環境ホルモン、ダイオキシン……煽った後の「総括」がない
 悪しき完全主義
 賢者は「統計」に学ぶ
 オバマは55歳で死ぬ?――統計の罠
 左利きは短命か?――「面白い説」はしぶとく生き残る
 未婚者は短命?――原因と結果のとりちがえ
 データに騙されるな!
 分母がない話は怪しい
 思いて学ばざれば……
第2章 「天然」大好き、「」は大嫌い……の罠(――真実はグレーの中に)
 「自然の恵み」なるもの
 危険な「天然」――身近に猛毒はたくさんある
 大自然はそれほど優しくない
 「」に怯えすぎ、「天然」に期待しすぎ
 「自然」を謳う悪質商法
 化学物質は人間の体で処理できない!?――マスコミの罪
 「合成品には副作用が!」という広告
 真実はグレーの中に――食べることは、同時に命を削ること
 青色1号はどれほど危険なのか?
 追いやられたソルビン酸、そして経済的損失
 カビないパンとカビるパン、どっちが怖い!?
 「複合汚染」は恐ろしい?
 「用量依存性」と「閾値(いきち)」を知る
 バランスよく食べることは、リスク分散でもある
第3章 ゼロリスク症候群という罠――メタミドホス禍から学ぶ
 2つのメタミドホス事件
 有機リン系殺虫剤――悪名高き農薬の代名詞
 基準値の設定――念には念を入れて、極めて厳しく
 メタミドホス報道の罪
 ゼロリスクという幻想――水にも致死量がある
 有害物質を処理する体の仕組み
 「ホルムアルデヒド汚染」の実際
 「定性思考」から「定量思考」へ――リスク判断の面倒さから逃げるな
第4章 「発がん」の恐怖――という罠
 殺人油、とされた「エコナ」事件
 「発がん油」の真実
 ブラジャーという発がんリスク
 人間の体自身も発がん物質を作っている
 発がん物質で、必ずがんになるのか?
 すべてはバランスの問題
 因果関係の難しさ
 「ない」ことの証明はとてつもなく難しい
第5章 「狂った油」「血液ドロドロ」の罠――トランス脂肪酸について、ひと言
 トランス脂肪酸とは何か
 天然の油脂からも摂取している
 「血液サラサラ」「ドロドロ」は妄想
 マーガリンがプラスチックに似ている??……トンチンカンな言いがかり
 トランス脂肪酸を気にするならば……
第6章 善意の砂糖玉・ホメオパシー――代替医療(疑似科学)の罠
 乳児死亡事故の波紋
 ホメオパシーとは何か
 科学の目から、ホメオパシーを見てみると……
 レメディは「効かない」!
 なぜ効き目があるように思えるのか
 「根拠に基づいた医療」
 ホメオパシーは排除されるべきか?
 正規医療を否定――まともな治療の機会を失う危険が高い
 バッシングでもゆるがぬ人気の秘密
 共存の道――背景には現代医療への不信がある
第7章 「改めまして、放射能基礎講座」――放射能の恐怖、という罠
 放射能について、いま一度
 原子力の話が難しく感じる理由
 原子の仕組み――セシウムはなぜ数種類あるのか
 3種の放射線
 アルファ線はメタボな核から
 ベータ線はアンバランスな核から
 おさまりの悪い核から出るガンマ線
 内部被曝と外部被曝
 単位を知らずして、放射線は語れない――その① ベクレル
 90万テラベクレルの重さ
 コップ1杯の水分子を海にまぜると……
 単位を知らずして、放射線は語れない――その② シーベルト
 一気に1シーベルトか、累計1シーベルトかで大違い
 半減期というもの――長ければ長いほど怖い?
 自然放射線は安全!?――ここでも「自然」「人工」の問題
 放射性物質がやっかいな理由
 警戒すべき核種は何か?――その① ヨウ素131
 警戒すべき核種は何か?――その② セシウム134、セシウム137
 警戒すべき核種は何か?――その③ ストロンチウム90
 セシウムとは何か
 細菌が放射能を分解する!?――化学を知っていれば「ありえない話」
 科学を伝える行為の難しさ
 「確定的」影響と、「確率的」影響
 放射性ヨウ素でがんを治す?――発がん作用と抗がん作用
 今回の事故では先天性障害の増加は起こらない
 安全域は何ミリシーベルト?
 ICRPの考え方――「合理的に達成可能な限り低く」=ALARA原則
 震災リスクと、放射能リスク
 人々の命を守るために、今、優先すべきは何か?おわりに
 「便利さ」という不安
 ゼロリスクの幻を追うのではなく、成熟したリスク認識を――

 

リスクとは、そしてリスクの表現とは

【読書メモ】「ゼロリスク社会」の罠[リスクを正しく捉える方法を学ぶ]

本書は前述したとおり、そして目次を見ても明らかなように』に対する心構えを実例を交えて説くものである。そもそもリスクとは『ある行動に伴って(あるいは行動しないことによって)、危険に遭う可能性や損をする可能性を意味する』ものである。

また、リスクは高低で表される。「リスクが高い」という具合である。では、その高低とは、『「(起きた時の影響の大きさ)×(起きる確率の高さ)」』で表せるというのである。危険や損をすることについて、その影響度合いと発生確率を換算して測るということなのである。

 

リスク認知因子10ヶ条

【読書メモ】「ゼロリスク社会」の罠[リスクを正しく捉える方法を学ぶ]

ハーバード大学のリスク解析センターでは、リスクを人びとが強く感じるようになってしまう10の要因を発表している。それを以下に列挙する。

  1. 恐怖心
  2. 制御可能性
  3. 自然か人工か
  4. 選択可能性
  5. 子どもの関与
  6. 新しいリスク
  7. 意識と感心
  8. 自分に起こるか
  9. リスクとベネフィット(利益)のバランス
  10. 信頼

1.は言わずとも理解できるだろう。2.は自分でコントロールできないことに対して感じてしまうこと。3.も言わずもがな。自然好きは多いはず。4.は2.にも近いが、自分に選択権がないことに感じること。5.は子供に対する心配心で感じること。6.は未知への恐怖。7.は関心あるものへ感じるバイアスのこと。8.は直接関係あるかどうかで発生するバイアス。9.は文字通りバランスの問題。10.は発信源や説明者への信頼度合いによる感じ方の違い。

これらは、リスクの判断を誤る原因において、自分自身へ、そして他者から与えられる要因として非常に重要な項目になる。自らも自らにバイアスをかけているように、他社からも正常な判断ができないような情報を与えられ、その結果、誤ったリスクヘッジをしていることは容易に想像できるだろう。

例えば、自分自身への誤った判断としては、ユリウス・カエサルの「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ようとしないものだ」という言葉は痛いほど理解できるだろう。誰しもバイアスは逃れれないということである。

他人からの情報は、恐怖心を煽る、自然を誇張する、子供へ関すること、等々、10項目すべてに当てはまるような情報が混線している。悪徳商法なんかはまさにその類である。現代社会の厄介なところはインターネットやSNSで怪しい情報が流れることである。万が一、悪意がなく悪戯に流した情報でも、それを真と捉えたものは拡散するだろう。一旦拡散されれば、それが似非であると証明することは困難になる。

 

リスク分析手法と化学物質評価方法

【読書メモ】「ゼロリスク社会」の罠[リスクを正しく捉える方法を学ぶ]

本書はリスクはゼロに出来ない。ということが前提である。そもそもリスクをどう捉えるか、どう認知し、どう対処するかを分析化学的見地から教えてくれる。そのキーワードは、「定性分析」と「定量分析」、「用量依存性」と「閾値」である。

例として交通事故に遭い死に至るリスクを考える場合、車で運転すると交通事故死に至るか至らないかが「定性分析」であり、この場合、至る可能性はあるので『至る』である。そして、「定量分析」は、平成29年度のデータだと死者数は3,694人で、当時の日本人の人口が1億2670万6千人なので『0.003%の確率で事故に遭う』と言えるわけである。ただし、このデータも道路交通事故であるため、車だけが対象ではないということは考慮するべきである。

定量分析のみの結果だけを鵜呑みにした場合、車に乗ることは恐怖心を煽る。なにせ、自分が死に直結する可能性が現にあるからである。しかし、次の定量分析も考慮すると限りなく可能性は低いことに気付く。また、もし、定量分析を考慮せず、恐怖心のみを受け入れて車のない生活を選択したとすると、それまで車から得られていたベネフィットが無になる訳である。

定性分析だけでリスクを判断することに、如何に判断を誤る可能性があるかが理解できたと思う。これは自分自身へはもとより、マスメディアや広告、インターネットなどの情報にも普遍して存在する。この話だけでも、リスクを認知し捉えることが最適な対処に対してどれだけ有効なのかが理解できただろう。

本書はそういった対処方法を実際の事例に即して説明する。現代は科学無くしては成り立たない。そういった意味でも化学的知見は非常に役に立つ。

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