![【書評】早稲田古本屋日録[古書店の香りのする本]](https://tasulife-23.com/wp-content/uploads/2020/06/00-7.jpg)
どうもタスです。
こんなにエッセイしたエッセイを手に取ったのは久し振りだ。本書は、早稲田にある古書店「古書現世」の店主である著者が書き下ろしたエッセイである。
著者の見た目からは思いもよらない文章タッチが読者を襲う(失言…)。その文章タッチが中毒性を増し、読書中に休憩することが難しい。私も時間が許すなら一息に読み切りたかった。
そこで今回は、読書習慣を始めて83冊目の本として『早稲田古本屋日録(右文書院)』を読了したのでお伝えする。
著者のご紹介(本書引用)
向井 透史(むかい とうし)
昭和47年(1972年)、早稲田に生まれる。堀越学園高校を卒業後、早稲田の古書店「古書現世」の二代目となる。毎日の古本屋生活を綴るブログ日記「古書現世店番日記」を公開中。
目次
Ⅰ 日々の帳場から
大雪の夜
年をまたぐ頃の出来事たち
海を越えて
空き地の目
ある古書目録
古本長者
雨の日に
ノラ物語
午後の境界線
書物の記憶
休業中
ひまわり
ヒデさん
上京
秘密
月影
ほこり舞う街角
睡魔
貧乏談義
紙魚の居どころ
秋のかほり
真夜中に、ひとり
そこにあるだけの日
Ⅱ 早稲田古本屋日録
六月
七月
八月
九月
早稲田青空古本祭
あとがき
本書を読んだら草っぱらへ瞬間移動
「すぐに稼げる文章術」の第7章で紹介された「文章で稼ぐための必読33冊」を上から読破していこうと、最初の5冊を購入。インターネットで購入したので、早い者勝ちで先に届いた本を読むと決め、手に取った本が本書である。
私には、どうもタイトルから面白みを感じなかった。それに表紙の猫ちゃん。いったい、この本のどこにどういったパワーがあるのか。読了後に何を得られるのだろうか。最初は不安なスタートだった。
しかし、読み始めるとその思いとは裏腹に、物語はどれも興味深いものばかり。心が温まる、活力が出る、笑みがこぼれる、励ましたくなる、そして、自分に投影する。エピソードのどれもが面白く、瞬時に脳内再生されるものばかり。
読んでいて気持ちの良い文章は久し振りだった。体はソファーの上にいても、脳内では、草っぱらで寝ころびながら読んでいる。もちろん、天候は快晴だ。半袖のTシャツにジーンズ姿に程よい気温で、風が涼しく、まだ時間も昼を回っていない。昼まで読んだら、ご飯でも食べに行こうか。って考えている自分がいる。
詩的センスと独特のタッチを堪能する
本書は、前半部分のエッセイと、後半部分の日記に大きく分かれている。前半部分は、古書現世の古書目録「逍遥」の裏表紙に書いたもの。後半部分の日記は、著者のご紹介に書いたブログに書き溜めたものだそうだ。
本書最初のエッセイ、「大雪の夜」はなんと19歳のときに書いたものだというから驚きだ。ともすると、この独特のタッチは磨いて得たものではなく、元から携えていたものなのだろうか。詩的センスを羨む文章ばかりである。
私は古本屋さんに入ったことはあるが、巡ったことはない。ましてや、古本市に行ったこともない。本書を読んで、とても惹かれた。本に。というよりは、その空間、空気、雰囲気。私も本の声を聴いてみたいと思った。
本には、種々の人生が記憶されている。私が持っている古本もご多分に漏れずであるが、その記憶の中に私との付き合いも追記されるのだ。本書も古本である。前オーナーも私と同じように感慨を覚えたのだろうかと思うと、なぜか嬉しく思う。
さいごに。是非、別紙栞も読んでほしい。栞には本書を読んだ5人の文章が寄せられている。どれも面白い文章だ。感じ方、表現、想い、三者三様なのが面白さを助長する。溢れ出る面白さが本書だけに留まらないことからも、とてもお得な本であることは言うまでもない。