【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]

【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]
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どうもタスです。

新型コロナウイルス「covid-19」は、その名のとおり2019年から猛威を振るい、もう年が明けて2021年になろうとしている今も引き続き世界を震撼させている。最近では新種が発生し、感染率が最大7割増しという恐ろしいニュースまで飛び込んできた。

こういう状況で気になるのは「感染症」である。身近なものでいえばインフルエンザもその対象だ。今回読んだ本は、今回の一連の騒ぎ以前に書かれたものではあるが、相当読まれているに違いない。私と同様、感染症の知識を欲する人は多いと思うからだ。

そこで今回は、読書習慣を始めて115冊目の本となった『感染症の世界史(角川ソフィア文庫)』を読了したのでお伝えする。

 

著者のご紹介(本書引用)

石 弘之(いし ひろゆき)
1940年、東京都生まれ。東京大学卒業後、朝日新聞社に入社。ニューヨーク特派員、編集委員などを経て退社。国連環境計画上級顧問、東京大学・北海道大学大学院教授、ザンビア特命全権大使などを歴任。この間、国際協力事業団参与、東中欧環境センター理事などを兼務。国連ボーマ賞、国連グローバル500賞、毎日出版文化賞を受賞。

 

目次

まえがき –「幸運な先祖」の子孫たち
序章 エボラ出血熱とデング熱 –突発的流行の衝撃
第一部 二〇万年の地球環境史と感染症
 第一章 人類と病気の果てしない軍拡競争史
 第二章 環境変化が招いた感染症
 第三章 人類の移動と病気の拡散
第二部 人類と共存するウイルスと細菌
 第四章 ピロリ菌は敵か味方か –胃がんの原因をめぐって
 第五章 寄生虫が人を操る? –猫とトキソプラズマ原虫
 第六章 性交渉とウイルスの関係 –セックスががんの原因になる?
 第七章 八種類あるヘルペスウイルス –感染者は世界で一億人
 第八章 世界で増殖するインフルエンザ –過密社会に適応したウイルス
 第九章 エイズ感染は一〇〇年前から –増えつづける日本での患者数
第三部 日本列島史と感染症の現状
 第十章 ハシカを侮る後進国・日本
 第十一章 風疹の流行を止められない日本
 第十二章 縄文人が持ち込んだ成人T細胞白血病
 第十三章 弥生人が持ち込んだ結核
終章 今後、感染症と激戦が予想される地球は?
あとがき –病気の環境史への挑戦
主要な参考文献

 

ウイルスはどこから来るのか

【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]

ウイルスはどこから来るのか?なぜこれほどまでに感染拡大するのか?なぜこうも人間はやられるのか?

その全ての答えは本書に詰まっているといっても過言ではない。そして、そのさわりだけでも説明したいと思う。まず「感染症」の定義を本書の一説を借りて説明する。

微生物が人や動物などの宿主に寄生し、そこで増殖することを「感染」といい、その結果、宿主に起こる病気を「感染症」という。

ここで「宿主」という言葉が出てくる。宿主とは、ウイルスの宿である。ウイルスは自己増殖できないために、宿主に寄生して自己を守る必要があるのだ。また、感染症を起こさず、対象となる生物に病原性のない状態で寄生する宿主を「自然宿主」という。

今回の「covid-19」でいう自然宿主はコウモリだと言われている。コウモリは100種以上のウイルスを媒介する「運び屋」と言われる所以である。さらに言うと、大半のウイルスは野生動物を介して感染することが知られているのだ。

 

病原体と人間との関り

【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]

感染症と人間との関りは想像以上に深いということが分かった。その理由は、人間の起源にまで遡ることにより理解できる。我々の先祖が誕生したのは、約20万年前のアフリカだ(アフリカ単一起源説)。

そこから世界の大陸に拡散するのだが、病原体も同じように拡散しているのである。つまり、感染症と人間との関りは最近の話ではなく、遠い昔からあったことになる。それを示す非常に興味深い一説があるので引用したい。

 これまでウイルスは、病気をもたらす厄介者としか考えられなかった。しかし、RNAウイルスの一種のレトロウイルスは、自分の遺伝子を別の生物の遺伝子に組み込むことによって、生物の進化の原動力にもなってきた。通常、遺伝子は親から子へ「垂直」に移動するが、ウイルスは生物の個体間を「水平」に遺伝子を移動させることができる。
 人の遺伝情報(ゲノム)が2003年にすべて解読されてから、たんぱく質をつくる機能のある遺伝子はわずか1.5%しかなく、全体の約半分はウイルスに由来することが分かった。多くは「トランスポゾン」といわれる自由に動き回れる遺伝子の断片だった。進化の途上で人の遺伝子に潜り込んだものだ。過去に大暴れしたウイルスの残骸かもしれない。

これは太古の昔から感染症と人間の関りが深いことを現す十分な事実である。

 

ウイルスはなぜこれほどまでに感染拡大するのか

【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]

ウイルスがどこから来るのか分かったところで、なぜこれほどまでに感染拡大するのかをさわりだけ説明する。

ウイルスは野生動物を自然宿主とするものが多いことから、必然的にアフリカを起源とするものが多い。アフリカや中国などは野味やブッシュミートといって、野生動物を食する習慣がある。野生動物に触れる機会が多いと必然的に感染リスクも高まる。

自然問題も感染症拡大に寄与している。森林破壊により行き場のない野生動物は人里に押し出されて感染症を拡散させる。感染した人間も、人口急増により都市が多くできたことで、人口密度が高まり、ここでも感染拡大に寄与している。また、今では世界中に移動できるほど移動手段には事欠かない。これは病原体が世界中に移動できることを示している。

 

ウイルスと人間による戦いの4つの結末

【書評】感染症の世界史[病原体と人間による戦いの4つの結末]

最後に、なぜこうも人間はやられるのか?については、なぜ人間が好まれるのか?に言い換えると分かりやすい。

微生物にとって哺乳動物の体内は温度が一定で、栄養分も豊富な恵まれた環境だ。なんとかして潜り込んで繁殖しようと図る。

人間は病原体にとっても自己を守るために必要な環境なのである。本書は人間と病気の関係を「軍拡競争」と喩えている。「covid-19」も人間に寄生し猛威を振るっているが、人間側もワクチンを開発することでウイルスに対する防御システムを確立しようとしているのだ。その結果、両者の関係は以下の4つのいずれかの結末に落ち着く。著者曰く、これは人間の戦争と変わらない。

  1. 宿主が微生物の攻撃で敗北して死滅する。
  2. 宿主側の攻撃が功を奏して、微生物が敗北して絶滅する。
  3. 宿主と微生物が和平関係を築くこと。
  4. 宿主と微生物がそれぞれに防御を固めて、果てしない戦いを繰り広げる。

すべての感染症について2.を希望するが、決してそう上手くはいかない。それは歴史が証明しているからである。「covid-19」は今後どうなるのか。はたまた、また新種のウイルスが登場するのか。

本書には即効性のある有効対策が書かれている訳ではない。しかし、様々な感染症の症状やその対策、歴史を知ることは、何も知らずに「covid-19」等の感染症を恐れるより、現実を直視する真実を見る目を鍛えるためにとても重要なのである。

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